A-site Randomness Effects in Perovskite Manganites

ペロブスカイトMn酸化物におけるAサイトのランダムネス効果

 

 ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ遷移金属酸化物はペロブスカイト型銅酸化物の高温超伝導に代表される非常にダイナミックな物性を示すことで知られている。このような物性はペロブスカイトの“堅い”結晶構造が遷移金属と酸素を非常に密な状態にし、その結果、結晶中の電子同士の相関が強くなることによって引き起こされる。これを強相関効果という。  近年、高温超伝導の他にもこの強相関効果の効いた面白い物性、「巨大磁気抵抗効果」がペロブスカイト型マンガン酸化物で発見されて盛んに研究が行われてきた。巨大磁気抵抗とは伝導性を示す物質に磁場をかけたとき、電気抵抗が大きく変化する現象を言う。この巨大磁気抵抗効果は応用面でも高密度・高速の磁気記録・再生における次世代のMRヘッド材料として、注目されている。  このペロブスカイト型マンガン酸化物は下に示すような組成式を持つ物質でこれまでの盛んな研究によってこのAもしくはA'サイトのカチオンを変えていくことでその物性を体系付けられることが分かっている。 その結果、ペロブスカイト型マンガン酸化物は電子の持つ二つの自由度、電荷とスピンに加え、軌道や結晶格子の相関によって、その物性を大きく変えることが分かった。磁気抵抗などの磁場誘起物性だけでなく、比較的高温での結晶構造相転移や金属-絶縁体転移などである。  これらは全て電荷・スピン・軌道・格子の複合物性であるのでそれぞれのみを考えていても理解は出来ない。逆に言えばそれによって様々な新奇な物性の発現が期待されるのである。以上がペロブスカイト型マンガン酸化物の魅力であり、現在も尚、活発に研究が行われている理由である。 近年盛んに研究が行われているペロブスカイト型マンガン酸化物であるが、その研究の殆ど全ては残念なことにその結晶構造のA、A'サイト(通称Aサイト)のカチオンが固溶した(Aサイトはランダムに占有されている)系であり(下図(a))、その結晶はAサイトのランダムネスにより、構造的には局所的な歪みを伴い、電荷の分布も非常に不均一になる。その結果、系の物性に多大な影響を与えることが予想される。そこで、我々はその電荷・構造の不均一をなくすために合成方法を工夫することで下図(b)のようにAサイトのカチオンR(R=Y,希土類元素)、Baが規則的に配列した系(RBaMn2O6)を合成した。また全く同じ構成元素を持つAサイト無秩序型RBaMn2O6(R0.5Ba0.5MnO3)も合成することによって、Aサイトのランダムネスが系の物性にどのように影響を与えるか詳細に調べた。